警視庁捜査一課の亀山薫刑事は、
たまたま入ったラーメン屋で、指名手配犯の阿部に遭遇する。
亀山は密かに携帯電話で捜査一課に連絡し応援を待つが、
阿部は食事を終えて出て行こうとしている。
焦った亀山は、隙を見て飛び掛かり、逮捕しようとするが、
阿部に拳銃を突き付けられて、逆に身動きできなくなってしまう。
その直後に到着した警官隊も、亀山が人質となっているため手が出せない。
阿部は逃走用の車を用意しろと、咆えまくる。
やがてこの事件はマスコミの知るところとなり、現場は大混乱に陥ってしまう。

そんな中、亀山の携帯が鳴った。
警視庁生活安全部の杉下右京警部補からだった。
右京は、自分が気を引くから、その間に犯人を取り押さえろと指示し、
電話を阿部に渡すよう求めた。
亀山が、逃走車のことで話があるらしいと、携帯を渡し、阿部が耳に当てた瞬間、
受話器から大音響が流れ出した。
右京が送話口でＣＤコンポのボリュームを一杯に上げたのだ。
仰天した阿部が怯んだ隙に、亀山は無事阿部を逮捕し、
数時間にわたる騒動は幕を閉じた。

翌日、亀山は"生活安全部特命係"への異動を命じられる。
この部署は決まった仕事もなく、部内で"陸の孤島"と呼ばれ、
配属された者がみな辞めてしまうことから"魔の部署"ともいわれるセクションで、
明らかに前夜の失態に対する左遷人事だった。
特命係へ挨拶に出向いた亀山は、上司となる男と顔を合わせてギョッとする。
皮肉にも彼を窮地から救ってくれた右京だったのだ。
亀山は、前夜の礼をいうが冷たくあしらわれてしまう。

亀山には、同棲中の恋人がいた。『帝都新聞』社会部記者の奥寺美和子で、
彼女の方が右京のことをよく知っていた。
それによると、右京はかつて捜査二課にいたのだが、余りにも切れ者過ぎるため、
上司に疎まれ今の部署に回されたという。
翌日、亀山は右京から、奥寺美和子という人は、君の恋人ですかと聞かれる。
さっき廊下で出会って、君のことをあまり苛めないでくれと
美和子から頼まれたというのだ。この言葉に、亀山は頭に血が上ってしまう。

その夜、亀山は見知らぬバーに入り、したたかに酔い痴れてしまう。
翌朝、目覚めてみると、まったく知らないアパートの一室に寝ていて、
しかも隣にはなんと男の刺殺体が転がっていたのだ。
亀山には、バーで赤いマニキュアをした背の高い女に声を掛けられたという
かすかな記憶があった。だが、それ以上は何も覚えていない。

亀山の急報で、数日前まで同僚だった刑事たちが駆けつけてきた。
そしてその中には、なぜか右京の姿もあった。
右京は、一課の刑事たちにうるさがられながらも、独自に部屋の中を嗅ぎまわる。
やがて、殺されていたのは交番勤務の現職警官・松原だと判明する。
さらに、凶器となった果物ナイフに亀山の指紋がついており、
彼は著しく不利な立場に立たされてしまったのだった。

そのころ警視庁では、内村警視長が金子警部に、
現職警官二人が絡んだこの事件を、迅速かつ穏便に解決するよう求めていた。
彼らが恐れていたのは、スキャンダルとしてマスコミが騒ぎ出すことだった。
右京が、松原について同僚警官などから聞き出したところ、
彼は日頃から素行が悪く周囲の鼻つまみ者だったことが分かる。
一方、松原に恋人がいることを掴んだ捜査一課の伊丹刑事は、
その女・小泉綾子から事情聴取を行い、自分が松原を刺したという供述を得る。
綾子によると、松原は彼女を弄ることで快感を覚える異常性格者で、
たまりかねて刺してしまったというのだ。
亀山は、綾子がバーで自分を誘った女かどうか面通しさせられるが、
絶対にそうだとは言い切れない。また、右京は遺体の刺し傷の数と、
綾子が自供した刺した回数との違いから、犯人は別にいると確信、
亀山のあいまいな記憶を頼りに、真犯人探しを始めるが…。