亀山薫は、警視庁生活安全課特命係の刑事。このセクションは、
上司の杉下右京警部補と薫の二人だけしかおらず、決まった仕事もない。
薫は過去の事件における失敗から、いわば"島流し"にされたようなものなのだ。

ある夜、薫は自宅でテレビのニュースに見入っていた。
化学薬品工場が炎上、多数の死傷者が出ていたのだ。
画面には、病院に搬送される負傷者が映し出されていた。
ところが、その中の一人を見て薫は仰天する。
ストレッチャーに寝かされ運ばれていたのは右京だったのだ。
薫は、右京の別れた妻で今は小料理屋の女将となっている宮部たまきに連絡を入れると、
同棲中の恋人で新聞記者の奥寺美和子とともに、
運ばれた先の帝国医科大学病院に駆けつける。
ところが、右京は事故とは無関係で、盲腸の手術のための入院とわかり、
薫たちは胸を撫で下ろす。

そんな中、この病院の外科の助教授・今井貞一が屋上から転落死するという騒ぎが起きる。
今井の部屋から、『医師としての限界を感じた、さようなら』と書かれた
遺書が発見されたことから、捜査に当たった所轄署は自殺と断定する。
だが右京は、転落直後の今井を写した現場写真を見て、不審を抱く。
今井のズボンのベルト通しの一つがなぜか引き千切れていたのだ。
周囲の者に聞いたところ、今井は几帳面な性格で、
ベルト通しが千切れているようなズボンを穿くはずはないという。
やがて、今井は同じ医局の太宰助教授と、教授の座を争っていたことが分かるが…。